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「異邦人」発売記念企画!!
  高澤瑛
x ふなもと健祐 (2020年1月某日)





6thアルバム『異邦人』発売記念×対談第二弾は
高澤瑛(Ba)とふなもと健祐(Dr)によるアルバム「異邦人」セルフライナーノーツ!!
まずはアルバム前半をお届け!!!


<ふなもと健祐x高澤瑛>


アルバム「異邦人」セルフライナー by高澤(Ba.)ふなもと(Dr.)


■M1「Aの葬列」について


ふなもと(以下、ふ):はい(笑)なんか照れますね(笑)
えー、この曲について、なんだけど、今回の4人体制になって初めてのこの作品がね、
どんなアルバムになるんだろうっていうイメージを4人ともバラバラにもってた思うんです。

んで仕上がる作品も各々が全く別のものを想像してたと思うんですけど、アルバムに入る曲が仕上がってきて録音もどんどん進んでいってその中でこの曲ができた時に、
この作品で見せたいこと、とか、この俺たち4人がなにを表明したいのか、ってのを象徴してる曲になってんじゃないかな、と思いましたね。

具体的に言うと、西邑さんの産み出す世界観とシンペイさんが放ってる陰や棘が要素とか概念としてあり、
ここの2人(高澤とふなもと)のリズムが形を為さしめるという構図。
ほんで、(打ち込み音源じゃなくて)この4人全員で楽器を鳴らして音を出すことによる熱量や、フィジカルな存在感。
それをど直球で顕してる作品なんじゃないかなーって思いますね。


高澤(以下、高):そうですね。自分はPVもそうだし、結構ダークなイントロの淡々とした感じが好きですね。


ふ:まさに!
これから何が始まるんだっていう、ダークな展開やともすりゃ謎な展開から予想裏切ってくる感じというか、
ワクワクさせられるなぁって。


高:そうですね。映像作品として見てどう思いました?


ふ:「おお凄い、こんな風になるんだ」と思いました。(作品の空気感が)撮ってた時の感じとまるで違う、って。


高:凄いと思いました。今回、その西邑さんのPVは毎回クオリティー上がってて凄いなって思ってます。初期のPVは見たことあります?


ふ:一通り観てますけど、(FOXPILL CULTに)加入する前に蛸地蔵のPVを西邑さんに撮ってもらったこともあって、
(西邑さんは)このパターンが好きなんだろうなぁとか、こういう手法による表現が好きなんだろうなっていうのは感じてました。
ですけど最近さらに映像表現のクオリティ高くなってんな、って思います。


高:うんうんそうですね。
あの制作過程を見てあれを見るとちょっとすごいなって、あの場所で撮った映像が、こういう風になるんだっていうのは思いました。


ふ:今回のMVは結構情報量多いと思うんですよ。
その結果を見る人を鑑賞する人に対する挑戦というか問いかけみたいなものをすごく孕んでいる。
見る人によって全然感じ方とか受け取り方が違うんじゃないかなって。背景とか、しっかり注目していろんなその意味が込められていて。
そーゆー要素を面白がれる人にも楽しんでもらえる作品になっているんじゃないかなぁと思いますね。
なにを感じるか、は観る人の自由で、絶対の答えなんか無いけどね。




■M2「Psyco Future」について


高:この曲は比較的最初のほうに完成した曲ですね。


ふ:去年の夏にはできてた、【異邦人】の中では1番最初にできた曲だったんじゃないかな?MVも最初だったし。
この、テーマの「エイリアンからの撮影」ってヤツなんだけど、なんか、『人間なんだけど人間100%人間としてはちょっと生きていけてない時』ってありませんか?


高:もう難しいこと言いますね(笑)


ふ:いやうまく言えないんだけどね(笑)
日常を生きていると、無機的に、システマティックに行動しないといけない時、しかももう自分の人間としての部分を殺してでもその状況に順応していかないといけない時、ってのがあるでしょ。
それは自分の人間としての自我には反しているはずなのに、システムに順応することを「自らの意思で」決定してる。…んだよね。
その「順応してるオレ」が機械、だとすると、人間としてのオレって何だ?人間のオレが行きたい方向って一体全体何なんだ?
…っていう、これも一つの問いですね。

んで、それを俯瞰で観察してる人間でも機械でもない奴、エイリアン。っていう構図。
曲自体が、機械っぽさも人間らしさもいい意味で共存してるんじゃないかなっていう印象がありますね。


高:そこまで読み取ってるんですね。
自分は確か(楽曲の原案が)3曲あるうちの中で選んだ1曲だったと思うんですけど、
単純に80s-90s ジャパニーズロックの要素取り入れつつ一番FOXPILL CULTぽさがあって良いなと思った曲ですね。打ち込みありつつ疾走感ある曲は難しい。


ふ:そうですね。曲調がシンプルにノリやすくてカッコいい、って自分でいうけど(笑)、
それをこのメンバーのこのバンドがやると何かそれだけじゃない奥行きが出せる、っというか、出てたらいいなぁ…というか(笑)



■M3「Shooting by Aliens 」について


ふ:この曲は自分にとって新しい体験をさせてもらった曲なんです。


高:どういうことですか?


ふ:この曲のレコーディングの時、いつものようにデモ音源をもらって、それで構成を覚えてね、
録音スタジオで西邑さんと2人で、西邑さんがエンジニアやって俺が叩くっていうレコーディング方式をとってるんだけど、
僕はただ構成を覚えてるだけの、曲の世界観への先入観0な状態で臨んだんですね。

で、その場で作曲者の西邑さんから『この曲はこういうイメージなんだ、だからこういう役になりきって叩いてほしい』っていうのを逐一伝えてもらいながら演奏したわけです。
その時は謂わば西邑さんは演出家、僕が謂わば役者としてその曲が表したい役を演じるかのような、その場でテーマだけ決まった即興の芝居を演じるような手法でドラミングをやったんですね。

そんなこと全くの未体験だったんですけどそれがほんとにすごく面白くて!!バチっと手応え感じたテイクが録れた瞬間二人して『コレだ』ってなりましたね!
すごくドラマティックに仕上がってると思うので、曲の展開ごとのドラミングの違いに注意を払って聞いてもらえると嬉しいなー…なんて。


高:深いですね(笑)
この曲はRec前から演奏してたのでイントロのBassの四分が自分が弾いていていい感じだなって思えて自分が楽しくなれました。

あとこの曲はベースはパズルっぽい。
打ち込みが鳴っていて、ベースラインを弾くって言うよりも足りない部分にピースはめ込んでいくみたいな吸い込まれるような、隙間にハマりに行く感じ。


ふ:ザワさん(高澤)のセンスも深い…(笑)




■M4「人間窟」について


高:字面がなんか怖いすね。
日本のホラー映画のような、ベルセルクでいう”触”みたいな?
いや全然関係ない感想ですが笑


ふ:あーベルセルク!めっっっっちゃわかるなぁ(爆笑)
窟っていうのがなぁ、人間っていう言葉とくっつくと芥川の「蜘蛛の糸」に出てくる地獄の亡者じゃないけど、人間がギチギチに詰まってひしめき合っているような、そんなイメージ持っちゃうんですよね。比喩やけどね。

でもその言葉のおどろおどろしさからどんなダークな曲なんだろうと思って再生ボタンを押してみたらディスコっぽい無機的なチューンが始まる、ってのがこのバンドのおもろいところですよねー(笑)

ベースでここちょっと聞いてみて欲しいとかありますか?


高:特にはないんですがイメージとしては
画用紙の半分は隙間なくしっかり描かれているけど半分は白みたいな感じ。


ふ:ほうほう。僕はそうだなぁ、この曲は大きく分けると神経質にひたすら16ビートを刻み続けてるパートと、
ポリメティック(アクセントを意図的にずらしたリズム)なビートのパートで出来ているんですね。

ちょっと異様な神経質さとか執着心、人間が持ってるそういう要素をこそっと極端に表現してみたのがこの曲ですね。
“それをするために僕のドラムセット自体もこの曲が決め手になって変わったんですよ。”


高:ふなもとさんの発言はロッキンオンで太文字の見出しになるようなこと言いますね(笑)


ふ:えーなんか恥ずい!!
単にパーツ増やしたよ、ってだけなんですがね(笑)




■M5「かりそめの恋」について


高:この曲はどうですか?


ふ:えーとまず1番最初に思うのは、リズム隊ムズいですね(笑)


高:めっちゃムズいです。


ふ:やっぱムズいですよね(笑
すごい1番練習をした曲ですね。
でも俺はプログレが好きなので、こういうキングクリムゾンとカンサスみたいな展開は好物です!


高:自分は昔のFOXPILLっぽい感じの曲だなぁとも思ってて、展開が多いのと、
途中のダサかっこいいあの熱い展開がとても自分は好きですね。ちょっとエモぽい。


ふ:どこのこと言ってるか俺今すごくわかるんですけど笑
ダサかっこいいは言い得て妙な感じですね。
めっちゃカッコいいのにすごくウィットがあるみたいな。


高:はい。


ふ:あのーちょっと裏方話にはなるんですけど、
今回かりそめの恋のデモをもらって、
あーこんな曲もやるんだって思って、
レコーディングが終わった後にですね。
なんでこういう曲を持ってきたんですか?みたいなことを西邑さんに聞いたんですよ。

そしたら「今のメンバーならできるだろと思って作った」と言われたんですね。

このアルバムはこの4人になってはじめての作品なので、しかもリズムがかなり肝の曲をこの4人ならできるだろって言ってもらったことで、
お前ならできるんだろうって言う期待をしてくれてるんだなっていうふうに思ってちょっと嬉しかったんですよね。


高:そうなんすね。
この曲は練習して楽しいですね。


ふ:うん、楽しい!難なくキマッた時の達成感たるや!




■M6「Temple of the Aliens」について


ふ:そうですねあのタイトルを直訳するとエイリアンの寺っていう意味になると思いますが、
もうちょっと噛み砕いて、「寺」っていうのが、宗教的な思想的なオブジェクトというかシンボルの場所、と僕は捉えてますけど、
自分たちとは違う世界に、自分の思想信条と全く異なる世界に潜入していくときのスリルがね、
迫害されると決まってるわけではないんですけど、
やっぱりはじめての場所に行く、しかも異質なものであるっていうのがわかってる場所に行く時って、それなりのスリル感があると思います。
そういうのを感じ取って表現しているなぁって思います。
言ってる事わかります?


高:分かりますよ!結構西邑さんが思ってる事汲んでる気しますよ。
そこまで俺は読み取れないですけど。
今こうやって改めてふなもとさんから聞くと曲の意図汲んでると思いますね。


ふ:良かった(笑)あの異邦の人の思想的空間に入っていくってすごい壮大なテーマのように言いましたけど、
結構僕たちの一般ルーツ的なところにも置き換えられるんよね。

ルーツっていうのは音楽的なっていうよりも、幼少時の体験て言うイメージでいいと思うんですけど、
んー、例えば誰しも経験があると思うんですけど、まだそこまで仲良くなってない子の家に初めて遊びに行くときのあのえもいわれぬ緊張感ていうか、
別にとって食われるわけじゃないんだけどなんか無性にドキドキするあの感じって覚えないですか?


高:ありますよ笑


ふ:初めてその子の家の玄関を潜る時と、例えばその家の母親とか家族とかがもしリビングにいたら「初めまして、こんにちは」って挨拶しに行くときの間の緊張とか、
挨拶したらそのまま背を向けてそのお友達の、まだたいして仲良くもない子友達の部屋で遊ぶんだけど、
背中にその子の家族の視線を感じながらその子の部屋に入っていく時もまたちょっと独特の緊張があるんじゃないかな。
そういう感覚なんですよね異邦の人の空間に入っていくときの緊張っていうのが。

そうそれに近い感覚を意識してドラムを叩いてるかなぁって。


高:深いですね。


ふ:タイトルをヒントに演奏するイメージを抱いてみたらそうなったんですよね。
高澤さんはこの曲をどう思いますか??


高:自分はこの曲はルースターズっぽい、
めんたいロックっぽい疾走感あってちょっと古い感じの日本のガレージロック感みたいなのがビートとギターの感じが良いなぁって思ってます。



===高澤瑛×ふなもと健祐対談、後編に続く!!!!!!==



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