vol.003
「HOMO DEMENS MAN」発売記念企画!!
プエルのエチオピアン・ファンク講座。
(2016年10月某日)



 



3rdアルバム『HOMO DEMENS MAN』発売記念第三弾!!

エチオピアン・ファンクと聞いてピンとくる人はどれほどいるだろうか。
奥深い世界にも関わらず、まだまだ日本語での情報が少ないこのジャンル。
にも関わらずFOXPILL CULTの最新アルバム『HOMO DEMENS MAN』の後半、
特に「what's happening brother」や「盗作のルーデンス」 等で随所に漂うエチオピアン・ファンクの匂い。
そのアレンジを主導したプエル自身によるエチオピアン・ファンク講座!!



「プエルのエチオピアン・ファンク講座」
(撮影:荒川れいこ(zoisite)、記事:プエル)


えー、どうもプエルです。今回ね、音楽のルーツやらなんやらそんな話で、ここ数年ハマってるエチオピア音楽とかを紹介しようかなと。


Bezunesh Bekele


一部ではエチオピアの美空ひばり(どこでだ?)と言われてる人です。意外と聴きやすいのではないでしょうか。この曲も、「リンゴ追分」を2倍速にしたみたいな感じだし。エチオグルーヴ歌謡の最盛期に活躍していたようで、みんな彼女に夢中!知り合いのエチオピアのおっさんも、顔は可愛くはないんだけど、ボディが最高だ!との事です。そういうのあるよね。


Tilahun Gessesse


さっきのが美空ひばりなら、こっちは五木ひろしか(!?)
そう、結構聴きやすいんですよ。エチオピアの音楽、日本の演歌に近いものを感じます。リズム&演歌という事でどうでしょうか。

く、クソかっけ〜!!
これ、背景、日本だったら、荒れる日本海の波ザッパーン(東映)なんでしょうけれど、エチオピアだと滝なのね。
エチオピアの銭湯も全部これです。(あるのかな)


Dereb the Ambassador


これなんですよ、エチオピア音楽にはまってしまったきっかけ。
全員で陰音階をユニゾンすることによって生まれる、なぞの推進力。その上で泳ぐ呪術的な歌唱。
なんとなく、デッケェなにかに触れた。と、青年プエルは感じました。
ブラスカッコいいな〜……

Alemayehu Eshete

こっちがオリジナル。
エチオピアのサブちゃんですね。漂う大御所感が、他の追随を許さない感があります。やっぱ体型と顔か。
この曲に限らず、今のエチオピア音楽って、ヨーロッパのミュージシャンが、先人たちの残した偉大な曲をカバーすることが多くて、

例えばこれ
uKanDanZ

レイジ+クリムゾンmeetsエチオピア音楽て所でしょうか。
ちとやりすぎ感もあるくらい、カッコいいなー!
uKanDanZ、結構ロック色強いので、入門に良いのかも。

で、元が、これ

先ほども登場した、Tilahun Gessesse
素朴だ。や、でも、心震わすのはこっちかな〜……

Hailu Mergia and the Wallias Band

お次はインスト。ハイル・メルギアさんのバンド。
自分の中にいくつか、エチオピアっぽさ、てのがあるんだけど、これはそれを、ほとんど網羅してます。歌がないってだけなんじゃないかな。
変拍子&シンコペーションの嵐が恐ろしいことになってて、頭おかしくなりそうな奴です。委ねたほうがいいか。
そしてオルガン凄え!Sun Raも裸足で逃げ出すぜ!(もともと裸足か……)
これも名曲で、よくカバーされてます。
これですね。

Getatchew Mekuria & The EX


これは、オランダのThe EXっていう、オランダのパンクバンドと、エチオピアの伝説的なサックス魔神、ゲタチュウさんの共作。
この人は、後であげるムラトゥ・アスタケと並ぶ、エチオピアジャズの巨人。



なんとも味わい深い……せつねぇ〜!



このThe EXってバンドも面白くて、エチオピアに限らず様々な国の人々と共演していて、もはやパンクなのかよくわからんものになってる。





Hailu Mergia

先ほどのハイルさんのソロ。
不思議な味わいの、ちと間抜けな感じもします。
リズムマシンの音が切ない。
アフリカの夜といった感じでしょうか。ピューンって音、聴くと、頭の中で星が飛んでいきます。
素晴らしいトリップミュージック。
ゲタチュウさんも、チープなリズムマシンとサックスのテープ出してたし、こういうの流行ってたんですかね。
韓国の大衆音楽トロット、ポンチャクとの親和性を感じずにはいられない。


???(Oh Kitaek)

韓国の流しって、ギターじゃなくて安キーボードでやることが多かったらしいんですよ。
チープなリズムを延々流して、歌と演奏だけ変えていく、みたいな。

そういうのが進化してくと、こうなる。


李博士

マジ、ジャーマンプログレにも劣らん。


マンモス楽団

こういうのを聴きながら、安酒をかっこむと思うと、泣けてくる。


あ、因みにハイルさん。
本国でタクシーの運転手をしながら、音楽をやっているそうな。


Emahoy Tsegue

ピアノソロのアルバム。
これまた、不思議な酩酊感を味わえるアルバムで、この感じは他にないんじゃないかな。
エチオピアって結構キリスト教の影響が強いんだけど、この人は、戦時中捕虜としてイタリアに送られて、そこでシスターへの道を選んだ。
結果生まれた音楽は、サティ等の西洋音楽と、自国の伝統音楽具合を絶妙に混ぜ合わせた、他に聴けないものに。
よくこれを聴きながら、お酒を飲んだものです。
素晴らしいチルアウトミュージック。


Mulatu Astake

最後は、ムラトゥ・アスタケ。
エチオ・ジャズの生みの親。
工学を学ぶためにイギリスに渡るんだけど、紆余曲折ありまして、ロンドンのトリニティ音楽大学で、音楽の学位を取得。ここって、あのフェラ・クティと同じ学校なのよね。出会ったりしてたのかな。
その後、アメリカに渡りバークリー音楽大学に入るんだけど、アフリカ大陸出身の初の生徒だったそうで。
エチオピアの音楽、ジャズ、ラテン音楽をミックスして、独自の音楽を、研究。
そして、帰国後、『エチオ・ジャズ』って、アルバムをつくったと。
あ、最近P-vineから再発されたので是非に。

で、この方、プレイヤーとしては、ビブラフォンを使うってのが特徴的で、エチオ・ジャズの創始者なんだけど、その後、ビブラフォンのフォロワーがあまりいない。(てか、いるのかしら?)


今も精力的に活動してて、2013年にソロアルバムを出しているし、

その年にはfujirockにも来ている。(フジじゃないけど、その時期のライブ映像)



やっぱwikiに載ってる人は楽だなあ。



ムラトゥで最後にしようと思ってたけど、もう一つ、BAESHI BANGを紹介。


Akale Wube(これまたかっこいい)っていう、フランスで活躍する若手エチオ・ジャズ・ファンクバンドのサキソフォニスト、エチエンヌ・ド・ラ・サイエットを中心に組まれた、若くして亡くなった韓国の昔の歌手「べ・ホ」へのオマージュプロジェクト。

こちら「べ・ホ」さん。20代とは思えない説得力です。オルガンももの悲しげ……


簡単に言えば、エチオピア音楽好きがそのフィルターを通して、韓国歌謡を再構築した、ってところかしら。

韓国とエチオピアって、密接な関係があって、朝鮮戦争の時にエチオピアからも、たくさん、朝鮮に送られたようで、その中にミュージシャンもいたみたい。
その中で、朝鮮の音楽を耳にすることもあったんじゃないかな。
彼らが負傷したり休暇などで日本に立ち寄った際に、演歌を聞いて、気に入り持ち帰った、という説もある。
「横浜の女に恋をした〜」なんで歌ってるエチオピア歌手もいるし。
エチオピア音楽に、不思議な馴染みを感じるのはそういうところもあるのかもしれない。




以上!プエルによるエチオピア音楽紹介でした!





TOPへ戻る